うちの犬


はっきり言っておばあちゃん犬だ。というかもう寿命が近い。さっき家に帰ってきたのだが、見当たらない。また入院しているのか。たぶんそうだろう。もしもうあの世へ旅立っていたとしたら、必ず親が連絡してくるだろうから。
もう十年以上うちで飼っていた。室外犬なのに室内犬として育てられ、去勢手術を受けたからか、結構長生きしたのではないだろうか。俺が中学生からの付き合いになる。妹の提案で買ってきたものだと記憶している。最初は別の犬を飼ってきたのだったが、確か体が弱くすぐに入院してしまった。親は言わなかったが死んでしまったのだと思う。そしてその代わりにやってきたのが今の犬だ。名前はマリー。犬種はシェルティーだ。
俺は当時かなりの犬嫌いで、決して犬に触れようとしなかった。台所で飼っていたのだが、俺が入るときは檻に入れさせていたくらいだ。それをいつ克服したかは覚えていない。今思うとその間、かわいがってやれなかったことが非常に悔やまれる。
一対一で接しているときは非常に物静かな犬だったが、人が二人以上に増えると異常なほどにはしゃいだ。うるさくて近所迷惑だったのではないかと思うくらいだ。かまってくれる人が多いのが嬉しかったのだろうか。さすがに最近は、うるさく吠えるようなことはほとんどなかったが。またなかなかのいたずらっ子で、台所のテーブルの上にパンなどを置いておくと、翌朝には大体無くなっていた。
散歩もさせなかったので、思い出というほどのものはほとんどない。うちに遊びに来た知り合いで、あいつにはなついていたとか、なついてなかったとかそれくらいだ。
正直覚悟は済んでいるつもりだが、実際に亡くしたときの衝撃は想像がつかない。しかしそれよりも心配なことがある。母だ。母はマリーを溺愛してきた。一緒に寝ているくらいだ。そんな母がマリーを亡くしたらどうなるだろうか。過剰に塞ぎこんでしまわなければいいのだが。実はDSの「nintendogs」を買ってこようと思ったこともあるのだが、母が気に入るかどうか五分五分だったのでやめた。


そして今(もう少し先かも知れないが)うちの犬は臨終のときを迎えようとしている。願わくばせめて安らかに。